工事写真の撮り方を、誰かに教わった記憶がありません。
「撮っておいて」と言われて撮る。何を、どのタイミングで撮るのか、撮った後どう整理するのかは、自分で覚えるしかありませんでした。
そして今は、発注者側でその写真を見る立場にいます。検査で「この会社は分かっているな」と感じるのは、写真がきちんと撮られている会社です。
この記事では、電気設備の工事写真をどう撮り、どう整理するかを書きます。国の撮影要領の解説ではなく、現場で回すための段取りです。
結論|写真は「撮る技術」ではなく「段取り」で決まる
先に結論です。
施工写真でつまずくのは、カメラの使い方でも構図でもありません。いつ撮るか、撮ったらどうするかを決めていないことが原因です。
- 黒板は「固定の情報」と「変わる情報」を分けて用意しておく
- 撮影は、職人さんがいない休憩(一服)のタイミングを狙う
- 撮ったその日のうちにフォルダへ移し、カメラの中を空にする
黒板の書き方|貼って固定するものと、毎回書くもの
黒板に書く項目は、こうしていました。

※図では違いが分かるように色を分けていますが、実際の黒板はすべて黒字です。
書く項目は、貼って固定するものと、毎回書き換えるものに分かれます。
工事名のように現場が終わるまで変わらないものは、テプラで作って貼り付けてしまいます。 毎回書き直すのは時間の無駄ですし、書き間違いも起きます。
日付、通り芯、施工内容といった変わる部分だけを、マジックペンでその都度書きます。
場所は「部屋名」より「通り芯」
ここが実務のポイントです。
部屋名は、仕上げが終わって完成していれば通じます。 ただ、施工写真を撮るのは、そのほとんどがまだ部屋の形になっていない段階です。
「1階 会議室A」と書いても、壁も天井もない状態では、どこを指しているのか後から分かりません。「1階 X1〜X2、Y3〜Y4」と通り芯で示すほうが確実です。
略図で通り芯と撮影方向の矢印を描いておけば、さらに分かりやすくなります。
なお、スパイダープラスのようなアプリで撮影する場合も、黒板に書く構成は同じです。手書きが電子になるだけで、必要な情報は変わりません。
スタッフ(標尺)は、距離が決まっているときに使う
スタッフを入れるかどうかは、寸法が管理項目になっているかで決まります。
入れる場面
| 対象 | 何を示すか |
|---|---|
| コンセント | FLからの高さ(FL+300mmなど) |
| スイッチ | FLからの高さ(FL+1,200mmなど) |
| スリーブ | FLからの高さ、スリーブ同士の距離 |
| スラブ配管 | 配管同士の距離 |
※高さの数字は現場によって異なります。設計図書や仕様書で確認してください。
入れなくていい場面
- ケーブルの配線状況
- ケーブルラックの布設状況
- 材料写真
高さや距離が管理項目になっていない対象には、スタッフは不要です。何でもかんでも入れると、かえって時間がかかります。
撮影のタイミング|休憩(一服)の時間を狙う
これは、知っているかどうかで作業効率がまったく変わります。
狙い目は、職人さんの休憩(一服)
現場によりますが、10時と15時が多いと思います。この時間帯は職人さんが全員いなくなるので、写真が撮りやすい。
作業中の人が写り込むこともなく、「ちょっとどいてください」と声をかける必要もありません。
その他のタイミング
- 朝礼の直後
- 撮影箇所が多いときは、作業が終わった後
- 17時以降は、あまり使いたくありません。特に冬は日が暮れるのが早く、暗くて撮影できないためです
冬場は、15時くらいまでに撮り終えるのがマストです。受電後で照明が点いている場所なら、この心配はありません。
「完成間際」に撮る
大事なのは、作業内容と進捗を常に把握しておくことです。
作業の途中で撮っても、完成していない状態が写るだけで意味がありません。完了間際、完成間際のタイミングを狙って撮る。 そのためには、今日どこまで進むのかを把握しておく必要があります。
撮る順番|使用材料 → 施工状況
撮影は、使用材料 → 施工状況の順です。
そして、図面の端から順番に撮っていきます。 思いついた場所から撮ると、必ず抜けが出ます。
材料写真を撮るタイミング
材料は、搬入時、材料置き場へ持っていった後に撮ります。重量物の場合は、搬入状況そのものも撮影対象になるので、忘れないようにします。
ここで差が出るのが、誰が発注しているかです。
- 自分で材料を発注している場合:搬入のタイミングが分かるので、撮影の予定も立てられます
- 協力会社に発注を頼んでいる場合:自分では分かりません
後者の場合は、コミュニケーションが必須です。「明日、露出配管をやる予定だから、今日、配管材が入りますよね?」と、こちらから聞いておく。これをやらないと、気づいたときには材料が使われた後です。
撮り忘れを防ぐ|平面図にチェックを入れる
撮影した箇所は、平面図にチェックを入れていきます。
図面の端から順に撮り、撮ったらチェック。これだけで、どこが残っているか一目で分かります。
スパイダープラスなどのアプリでiPadを使って写真をまとめる場合は、この作業は不要です。図面上のどこを撮ったかがアプリ側で管理されるので、チェックの手間がなくなります。
その日のうちにフォルダへ移す|カメラの中は空にする
撮影したら、その日のうちにパソコンのフォルダへ格納します。工種ごとに整理します。
デジカメを使っている場合、フォルダに移したらメモリーカード内の写真データはすべて削除して、ゼロにしてください。
これは地味ですが、効きます。カードの中に何日分もの写真が溜まっていると、「これは今日撮った写真か、昨日のものか」と分からなくなります。毎日ゼロにしておけば、カードの中は常に当日分だけ。 混乱しようがありません。
毎日やれば、1日あたり数分です。溜めると、竣工間際に数百枚とにらめっこすることになります。
写真を含めた竣工書類の全体像は、こちらにまとめています。
塞がれてしまったら|残りを確実に押さえる
それでも、撮り忘れは起きます。
隠蔽部は、塞がれてしまえば取り返しがつきません。 解体しない限り、撮り直しはできません。
そのときにやるべきことは、まだ塞がれていない他の隠蔽部を、確実に撮ることです。
検査に立ち会う側から言うと、隠蔽部を全箇所チェックする人は、ほとんどいません。 規模が大きければ物理的に無理だからです。見ているのは、各部屋で1箇所、各階の廊下で1箇所、各階のEPS内で1箇所といったポイントです。
ただし、撮影がゼロ、あるいは半分程度しかない状態は、まったく評価できません。 その場合、隠蔽部の品質を判断する材料がないことになります。
だからこそ、1箇所撮り忘れたからと投げ出さず、残りを確実に押さえる。 それが、最終的に自分を守ります。
発注者側が検査で写真のどこを見ているかは、こちらに書きました。
中間検査・竣工検査で発注者が見ているところ|電気設備のチェックポイント
まとめ|段取りが決まれば、写真は怖くない
施工写真でやることは、これだけです。
- 黒板の固定情報はシールで貼り、場所は通り芯で示す
- スタッフは、高さや距離が管理項目になっている対象にだけ入れる
- 10時と15時の休憩(一服)を狙い、完成間際に撮る
- 図面の端から順に撮り、平面図にチェックを入れる
- その日のうちにフォルダへ移し、メモリーカードを空にする
どれも特別な技術は要りません。決めておくかどうかだけです。
私はこうした現場の経験を持って、施工管理から発注者側へ転職しました。今の働き方を続けるか迷っている方は、転職までの記録をまとめたこちらもどうぞ。


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