消防検査で指摘されたこと|事前確認で防げるものと防げないもの

天井の感知器を指さして確認する人物のピクトグラム|消防検査で指摘されたこと 施工管理のリアル
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「クローゼットの中にも感知器が必要です」

管轄の消防署でそう言われたとき、私は正直「ここにも要るのか」と思いました。ただ、指摘を受けたのが施工に入る前だったので、対応できました。

もし施工後に言われていたら、天井を開け直すことになっていたはずです。

私は電気サブコンの施工管理を6年経験し、3年目で一人現場の現場代理人を任されました。この記事では、消防検査に向けて何を準備し、どこで指摘を受けたのかを実体験で書きます。

消防の指摘は、内容を覆すのが難しいというのが正直な実感です。だからこそ、確認のタイミングがすべてを分けます。


結論|消防への確認は、早ければ早いほどいい

先に結論を書きます。

消防検査で大事なのは、検査当日の準備ではありません。設計段階で、管轄の消防署に確認を取っておくことです。

理由は単純で、消防の指摘は覆せないからです。こちらが「不要では」と思っても、担当者が必要と判断すればそれに従うことになります。

そして、確認が遅れるほど代償が大きくなります。

確認のタイミング指摘を受けたときの影響
設計段階・施工前図面を直せば済む
施工中手戻りが発生する
施工後解体してやり直し。「なぜ事前に確認しなかったのか」と言われる

  • 消防への確認は、総合図を作る前、設計図の段階で行く
  • 感知器・キュービクル・非常用発電機の位置は必ず事前協議
  • 指摘は増額要素になるので、増減見積とセットで動く

電気施工管理が関わる消防用設備

まず、何が消防の管轄なのかを整理します。

消防法上の消防用設備等は、消火設備・警報設備・避難設備などに分類されます。電気施工管理が関わる主なものは次のとおりです。

分類主な設備
警報設備自動火災報知設備、非常警報設備(非常ベル・放送設備)
避難設備誘導灯および誘導標識
消火活動上必要な施設非常コンセント設備、無線通信補助設備

受変電設備や非常用発電機は、消防用設備そのものではありません。 これらは消防用設備に電源を供給する非常電源として位置づけられます。ただし設置位置については消防との協議が必要になるので、実務上は同じタイミングで確認することになります。

なお、これらは代表的なものです。建物の用途や規模によって必要な設備は変わるので、担当する建物で何が対象になるかを最初に洗い出してください。

後になって「これも消防設備だったのか」と気づくのが、一番まずいパターンです。


事前協議で実際に指摘されたこと

私は総合図を作る前、設計図の段階で管轄の消防署へ協議に行くようにしていました。そこで受けた指摘が2つあります。

① クローゼットの中にも感知器が必要

総合図を持っていったところ、感知器のプロットについて指摘を受けました。クローゼットの中にも必要とのことでした。

正直、設置するとは思っていませんでした。

いま調べてみると、収納への感知器設置は、収納の種類や形状によって扱いが変わります。

たとえば袋井消防本部の技術基準では、押入や作りつけ収納について設置を要しない場合が定められていますが、内部に人が入って作業できる収納(ウォークインクローゼット等)はその対象から除かれています。

出典:袋井消防本部「消防設備等に関する技術基準」

これはあくまで一つの管轄の基準です。 同じ「クローゼット」でも、面積や形状、そして管轄によって判断が変わります。

当時の私は基準を読み込めていませんでしたが、仮に読んでいたとしても、自分の解釈が管轄の運用と一致する保証はありません。

② 誘導灯をB級ではなくA級に

こちらも指摘です。当時は過剰なスペックに思えました。

指摘の趣旨は、有効範囲だったと記憶しています。

誘導灯には「有効範囲」という考え方があります。その誘導灯まで歩いて到達できる距離の目安です。

等級は表示面の縦寸法で区分されていて、0.4m以上がA級、0.2m以上0.4m未満がB級、0.1m以上0.2m未満がC級。表示面が大きいほど遠くから視認できるため、有効範囲も広くなります。

避難口誘導灯の有効範囲は、おおよそ次のとおりです。

等級矢印なし矢印あり
A級60m40m
B級30m20m

出典:消防法施行規則第28条の3、消防予第245号(平成11年9月21日)

A級とB級では、2倍の差があります。 つまり「器具を大きくしろ」と言われたわけではなく、避難口までの距離に対してB級では有効範囲が足りない。その結果として上位等級が必要になった、という順序です。

ただし、等級の判断は距離だけで決まるものではありません。建物の用途や床面積、階数、無窓階の有無などによっても変わります。メーカーの資料でも「最終的な判断は所轄の消防署への確認が必要」とされています。

当時の私は、この理屈を理解しないまま渋々変更していました。 いま振り返れば、指摘は正当なものです。もちろん、器具の等級が変われば単価も変わります。

総合図を作る段階では、感知器と空調機の吹き出し口が近くなるなど、消防に確認すべき点が新たに出てきます。総合図の進め方はこちらに書きました。

総合図の作り方|一人では完成しない図面の進め方


指摘は、担当者によって変わる

ここが消防対応の難しいところです。

感知器の設置基準は、管轄消防の審査基準に基づいて判断されます。ただし、その運用が管轄ごとに違います。

収納への感知器設置がまさにそうで、法令が細部まで一律に定めているわけではなく、各消防本部が技術基準や運用基準という形で具体化しています。 誘導灯についても、メーカーの資料には「設置要否・設置位置・等級・有効距離は建物の条件によって異なり、最終的な判断は所轄の消防署への確認が必要」と明記されています。

同じ図面を持っていっても、管轄が違えば答えが変わりうるということです。

さらに言えば、同じ消防署でも担当者個人で判断が分かれることがあります。Aさんは「不要」と言い、Bさんは「必要」と言う。 実際にそういう話を聞きます。

だからこそ、自分の判断だけで進めるのは危険です。「基準を読む限り不要のはず」と思っても、確認しなければ答えは分かりません。

そして自分の想定が覆されるケースが、体感ではほとんどでした。


指摘は、そのまま増額要素になる

見落とされがちですが、重要な点です。

感知器が増えれば材料費も施工費も増えます。誘導灯のグレードが上がれば単価が上がります。これらはすべて増額要素です。

つまり、消防の指摘を受けたら、増減見積の作成がセットでついてきます。

しかも、こうした変更は施工前に確定させておかないと、後から請求しづらくなります。消防の確認を早く済ませることは、金額を早く確定させることでもあります。

増減見積の作り方は、こちらにまとめました。

増減見積の作り方|現場で赤字を出さないための予算管理


検査までに準備すること

私が実際にやったことを整理します。

提出書類

着工届と設置届を管轄消防へ提出します。あわせてプロット図や系統図も求められます。

現地の準備

配線、感知器、受信機、発電機の設置。そして各種試験です。

  • 感知器の動作試験
  • 発電機の試験
  • 総合連動試験

総合連動試験がメインイベント

消防検査前の山場は、総合連動試験です。

感知器が発報したら防火戸が動作する。こうした電気以外の設備との連動を確認する試験で、消火設備や防火戸の業者とも合同で実施します。

自分の担当範囲だけ完璧でも、連動先が動かなければ成立しません。他工種との調整が必要になる場面です。

検査当日

私の現場では、竣工の1ヶ月前から半月前に検査を受けました。建物の用途や規模によって変わるので、工程表で確認してください。

立ち会うのは、管轄の消防検査官です。私が経験した限りでは、2人以上で来るケースがほとんどでした。 1人だけで来られたことはありません。

施工者側は、電気だけでなく建築、空調・衛生の担当者も立ち会います。感知器の発報で防火戸が動作するといった、他工種との連動を確認するためです。加えて元請け、設計者、工事監理者、施主が立ち会う場合もあります。

こちらは自火報メーカーや発電機メーカーにも同席してもらいます。

検査の項目数も、担当者によって変わる

事前協議の話と同じことが、検査当日にも起こります。

私は両方のパターンを経験しました。

パターン検査の進み方
項目が少ない現場を周回しながら、一部の感知器を選んで加熱試験を行う
項目が多い設置してある感知器を全て加熱試験する

後者は当然、手間も時間もかかります。感知器の数が多い建物なら、それだけで一日仕事です。

正直に言えば、項目が少ないほうがありがたいと感じました。ただ、これはこちらが選べるものではありません。管轄や担当者によって決まるので、時間がかかる前提でスケジュールを組んでおくのが安全です。


これから消防検査を担当する方へ

① 事前確認は、すぐに行く

繰り返しになりますが、これに尽きます。総合図を作る前、設計図の段階で管轄消防へ行ってください。

理由は手戻りです。総合図が完成した後に「ここにも感知器が必要でした」となると、図面の再作成が発生します。作り直しになるのは自分の作業だけではありません。 関係者に差し替えを依頼することになり、現場の士気にも影響します。

設計図の段階なら、指摘を織り込んだ状態で総合図を作れます。確認の順番を変えるだけで、余計な作業がまるごと消えます。

確認すべきは、感知器のプロット、キュービクルと非常用発電機の設置位置です。

受電の段取りでも同じことを書きましたが、消防と電力会社への確認は、自分の努力ではどうにもならない領域です。だから最優先で動きます。

受電の段取りと準備|電力会社と消防を最優先にする理由

② 協力会社と一緒に行く

これが実務的なコツです。

自動火災報知設備には、必ず専門の協力会社がついています。設計図をベースに、その業者と一緒に管轄消防へ協議に行く段取りを組んでください。

発電機についても同様です。専門業者が同行してくれます。

最悪、自分が行けなくても協力会社だけで行ってもらうことも可能ですし、実際に対応してくれます。

③ キュービクルと誘導灯は、話の流れで確認する

一方で、キュービクルと誘導灯には専門の施工協力会社がいないケースが多く、自分で行くしかありません。

効率的なのは、自火報や発電機の業者と一緒に行った際、話の流れでキュービクルと誘導灯についても確認してしまうことです。1回の訪問で複数の確認を済ませられます。

④ 対象設備を最初に洗い出す

担当する建物で、どれが消防用設備なのか。着工の早い段階でリストにしておいてください。

後から「これも消防設備だったのか」と気づくと、そこから協議のやり直しになります。

ここで、私が最初につまずいた話を書きます。

一人現場を任されたとき、私は消防設備が何なのかを正確に理解していませんでした。

管轄の消防署で非常用照明について話を持ち出したところ、担当者からこう言われました。

非常用照明は、消防ではないですよ

そのときは「なぜ?」と思いました。後で調べて分かったのは、こういうことです。

設備根拠法令検査
誘導灯消防法消防検査
非常用照明建築基準法建築の完了検査

名前も見た目も似ていますが、法律がまったく違います。 先輩に聞いたら「常識だよ」と言われました。

致命的なミスにはなりませんでしたが、恥ずかしい思いをしました。担当する設備がどの法律に基づくものなのかは、最初に整理しておくべきです。


検査に落ちた事例

私が担当した現場ではありませんが、聞いた話を書いておきます。

現場全体の工程が遅れていて、検査当日に壁と天井のボードが貼られていないという状況でした。

ボードがなければ、誘導灯は設置できません。仕方なく床に置いて「ここに設置予定です」という形で検査を受けたそうです。

当然、合格になるわけがありません。済証はもらえず、1週間後に再検査となりました。

これは電気担当が悪いわけではなく、現場全体の遅れが原因です。ただ、消防検査は自分の工程だけ守っていても成立しないという一例ではあります。



まとめ

消防検査で本当に大事なのは、当日ではなく設計段階の事前確認です。

指摘は覆せません。そして施工後に受けると、手戻りに加えて「なぜ事前に確認しなかったのか」という話になります。私が指摘を受けたクローゼットの感知器も誘導灯のグレードも、施工前だったから対応できました。

自火報や発電機の協力会社を頼れば、確認のハードルは下がります。一人で抱え込む必要はありません。

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