施工管理をしていた頃、設計図のとおりに幹線ケーブルを拾っていたら、サイズが足りなかったことがあります。
設計図に書いてあるのだから正しいはず——そう思い込んでいました。
いまは設備系コンサルとして、発注者側で設計図をチェックする立場にいます。施工者出身だからこそ、「施工の段階で困りそうなところ」が見えるようになりました。
この記事では、電気設備の設計図でよく見つかる不整合と、私がどうやって設計図をチェックしているかを書きます。
結論|設計図は「0を1にした図面」。2にするのは施工者の仕事
先に、この記事の前提をお伝えします。
設計図に不整合があるのは、設計者の落ち度だとは思っていません。役割が違うのです。

建物の完成形を「2」とすると、設計図は、何もない「0」を「1」にした図面です。何を、どこに、どういう考え方でつくるのか。方向性が示されていれば、設計図としての役割は果たしています。0を1にするのは、大変な仕事です。
そして、1を肉付けして2にするのが、施工図であり、施工者の仕事です。
だから施工者は、1のままの設計図を、そのまま信じてはいけません。 疑って読み、2にするために足りないものを探す。それが施工者の役割だと思っています。
- 設計図は方向性を示す図面。細部に不整合があっても不思議ではない
- 施工者は、設計図をそのまま信じず、疑って読む
- 図面同士の食い違いは、施工図を描く前に見つけておく
よく見つかる不整合
発注者側で設計図をチェックしていて、よく見つかるのはこういうものです。
| 不整合の種類 | 具体例 |
|---|---|
| 系統図と平面図の食い違い | 幹線ケーブルが、系統図ではCVT100sq、平面図ではCVT150sq |
| 盤の負荷表と平面図の回路番号の違い | ウォシュレット用コンセントが、負荷表では回路⑤、平面図では回路⑥ |
| そもそも系統図がない | 平面図だけで、全体のつながりが読み取れない |
| 工事区分表の記載がない | どこまでが電気工事か分からない。特記仕様書など序盤にあると理想 |
| 規模と仕様が合っていない | 幹線がCVT60sq×1本なのに、ケーブルラックの幅が1,000mm |
どれも、1枚ずつ見ているだけでは気づきません。 図面の種類をまたいで、同じ情報が一致しているかを見て、初めて分かります。
最後の「ケーブル1本なのにラック幅1,000mm」は、将来の増設を見込んでいる可能性もあります。ただ、施工者としては気になる部分なので、設計の段階で意図を確認しておくほうが、後で揉めずに済みます。
私が設計図を信じて失敗した話
冒頭に書いた、幹線ケーブルの話です。
施工管理をしていた頃、設計図のとおりに施工図を描き、ケーブルを発注するために数量を拾っていました。そのとき、先輩にこう聞かれました。
「幹線のサイズ、自分で幹線計算して検証した?」
していませんでした。設計図に書いてあるサイズを、そのまま使っていたのです。
そこで、自分でケーブルの距離を拾い、計算し直しました。結果は、設計図のサイズでは細かった。
問題はケーブルだけで終わりませんでした。細いケーブルを前提に設計されていたので、ケーブルラックの幅も、配管のサイズも、ワンサイズずつ足りないことが分かりました。1つの数字がずれると、それにつながるものが全部ずれるのです。
発注前に気づけたから、まだ良かった。設計図を「正しいもの」として扱っていたら、現場で取り返しのつかないことになっていました。
材料を拾って発注するまでの流れは、こちらにまとめています。
私の設計図チェックの仕方
いまの仕事で、設計図をどうチェックしているかを書きます。
1ページ目から、順番に見る
特別な順番はありません。1ページ目から順番に見ていきます。
見ている観点は、1つです。図面の種類が違っても、同じ情報が一致しているか。 系統図と平面図、負荷表と平面図。書かれている場所が違うだけで、指しているものは同じはずです。
紙ではなく、PDFを2画面で見る
チェックは、紙ではなくPDFデータでやっています。
系統図と平面図を比べるときは、2つのPDFを同時に開きます。PDFソフトによりますが、表示タブの「新しいウィンドウで開く」を使えば、左に系統図、右に平面図と並べて見られます。

画面の大きさも大事です。
| 環境 | 評価 |
|---|---|
| ノートパソコンの画面だけ | 小さすぎて比較しにくい。おすすめしない |
| 外部モニター1台(拡張モード) | 系統図を見ながら平面図を見られる |
| 外部モニター2台(拡張モード) | 最適。2つの図面を大画面で並べられる |
私自身は、外部モニター2台で見ています。図面の細かい文字や回路番号を追うなら、画面の大きさはそのまま作業の速さになります。
施工者目線で、できる範囲で
いまの立場では、幹線計算まではしません。時間も限られています。
それでも、施工者出身として、施工の段階で困りそうなところを、設計の時点で見つけておくことを意識しています。1を2に近づける手助けです。
この設計図のチェックも含めて、設備系コンサルが普段どんな仕事をしているのかは、こちらに書きました。
設備系コンサルタントの仕事内容|元施工管理が書く実務のすべて
見やすい図面の条件
チェックする側から見て、見やすい図面には共通点があります。
白黒で描かれていること。 カラーの図面は、チェックしにくいのです。チェックするときは赤字などの色で書き込むので、もともと図面に色が使われていると、どこがチェックの書き込みなのか分からなくなります。
白黒で描くなら、違いは線の太さで出します。電気の情報は太く、建築など他の情報は細く。 これだけで、見るべきところがすぐ分かります。
これは総合図でも同じです。
設計図のままだと、総合図で困ること
設計図を疑わずに使うと、総合図の段階で問題が出ます。よくあるのが、空調機とダウンライトが重なるケースです。
「設計図にこの位置でダウンライトがプロットされていたから、そのとおりにプロットした」。電気の図面だけを見れば成立しています。でも、空調の図面と重ねると成立しません。
現場は、電気だけでできているわけではありません。 電気と空調のサブコンが図面データを共有していても、こういうことは起きます。完成形を想像せずに、設計図の位置をそのまま写しているからです。
照明を均等割りで配置していない、というのも同じです。施工図の段階でも起こります。
発注者側が検査で何を見ているかは、こちらにまとめています。
中間検査・竣工検査で発注者が見ているところ|電気設備のチェックポイント
まとめ|1を2にするのが、施工者の仕事
設計図は、方向性を示した図面です。細部に不整合があっても、それは役割の違いです。
施工者がやるべきことは、これだけです。
- 設計図をそのまま信じず、疑って読む
- 系統図と平面図、負荷表と平面図など、図面をまたいで同じ情報が一致しているか確認する
- 幹線のサイズは、自分で計算して検証する
- 総合図では、他の設備と重ねて完成形を想像する
- 気になる仕様は、設計の段階で意図を確認する
私はいま、施工者出身だからこそ、設計図の段階で施工者目線のチェックをして、完成形に近づける手伝いをしています。発注者側の立場から施工会社がどう見えているかは、こちらに書きました。


コメント