転職して最初の給与日、明細をダウンロードしてパソコンの画面で眺めていました。
残業時間は、ゼロに近い。それなのに、新卒のころの給与とほとんど変わっていませんでした。
その瞬間に、6年間の何かがはっきりしました。私の年収は、残業代でできていたのだと。
私は電気サブコンの施工管理として6年働き、デベロッパー、設備系コンサルタントへと2回転職しています。在職中の1年間、勤務表に載る残業と実際の労働時間を毎日記録していた人間です。 この記事では、サブコン時代の年収がどういう構造だったのか、転職して何が変わって何が変わらなかったのかを、実体験で書きます。
金額そのものは書きません。代わりに、割合と構造を書きます。そのほうが、あなたの場合に当てはめやすいと思うからです。
結論|残業を7分の1にしても、年収は下がらなかった
先に結論を書きます。
サブコンからデベロッパーへ転職して、残業は月平均71時間から10時間以下になりました。 7分の1以下です。
それでいて、年収は下がっていません。約10%上がっています。
「転職で年収が倍に」といった話ではありません。10%です。ただ、その10%を得るために働く時間が、7分の1になっている。これが6年目の私には見えていなかった、一番大きな話でした。
- サブコンの年収は、残業代が約3割を占めていた
- 残業をやめれば、手取りは約3割落ちる
- だから残業を減らせない。これは個人ではなく構造の問題
サブコン時代の年収は、こういう構造だった
金額ではなく、割合で公開します。
| 項目 | 実態 |
|---|---|
| 年収に占める残業代 | 約30% |
| 残業がない月の手取り | 通常より約30%減 |
| 実際の残業時間 | 月平均71時間(1年間の記録) |
| 手当のつかない残業 | 年間386時間 |
| 資格手当(1級電気工事施工管理技士) | なし |
| 現場代理人手当 | 手取りの5〜10%程度 |
年収の3割が残業代。この一行が、サブコン時代の働き方をほぼ説明しています。
この構造から見えた3つのこと
① 残業を減らすと、生活が変わってしまう
残業が減れば体は楽になります。でも同時に、手取りが3割落ちます。
3割です。月々の生活設計が変わる幅です。家賃も、貯金も、この前提で組み立てられている。
だから「残業を減らしたい」と思っても、心のどこかで減ってほしくない自分がいました。この矛盾を6年間抱えていたことになります。
② そもそも、働いた分すらもらえていなかった
さらに厄介なのが、ここです。
私は在職中、勤務表上の残業と実際の労働時間を1年間記録していました。勤務表470時間に対して、実態は856時間。差の386時間には、手当がついていません。
月に直すと、毎月32時間分が支払われていない計算になります。1日8時間で換算すれば、毎月4日分ただ働きしていたということです。
つまり、年収の3割を残業代が占めていながら、本来もらえるはずだった分は受け取れていなかったということです。残業に依存した年収でありながら、その残業すら正しく換算されていない。
数字の詳細は、こちらに記録として公開しています。
施工管理業務 サービス残業のリアル|勤務表と実態の差を記録で公開
③ 残業を断るという選択肢が、そもそもなかった
「残業を減らせばいい」と言われれば、その通りです。でも現場では、断るという選択肢が存在しませんでした。
工期は動かせない。日中は現場に出ているので、書類は夜になる。自分の要領の問題もあったとは思います。ただ、転職後に出会った元施工管理の人たちも、同じことを言っていました。 前職のサブコン出身者も、別の会社から来た人も。
複数の会社で同じ現象が起きているなら、それは個人の能力ではなく、仕事の構造から来ているのだと思います。
サブコンという立場に固有のキツさについては、別記事に書きました。
サブコンを辞めたい|キツさの正体は「立場」だった。6年働いた私の結論
転職して、実際どうなったか
1年目は、上がりませんでした
正直に書きます。転職1年目の年収は、サブコン時代とほぼ同じでした。
理由は2つあります。試用期間が3ヶ月あったこと。そして、最初の賞与が満額出なかったことです。
これに気づいたのは、賞与が支給される前月でした。ふと「最初の賞与ってフルでもらえないよな」と思って確認したところ、試用期間が反映されないため減額されると分かりました。
正直、最初は「えっ」と思いました。 ただ、冷静に考えれば当たり前の話です。担当の転職エージェントに聞いても「それが普通です」と言われ、腑に落ちました。
賞与の回数そのものは年2回で、サブコン時代から変わっていません。支給額の感覚も、サブコン時代と1回目の転職先ではほぼ同じ。2回目の転職先である現職が、最も大きくなっています。
- 転職1年目:サブコン時代とほぼ同水準
- 2年目以降:約10%アップ
- 賞与の回数:年2回(3社とも同じ)
2年目から上がった
賞与が満額出るようになった2年目から、年収は約10%上がりました。
このとき思ったのは、転職の年収は1年目で判断してはいけないということです。もし1年目の数字だけを見て「上がらなかった」と結論づけていたら、判断を誤っていました。
そしてもう1つ。1年でポンポン転職を繰り返すと、トータルの年収は下がります。 毎回、試用期間と初回賞与の減額を通過することになるからです。
最低でも2年はいないと、転職した意味がない。これが1回目の転職で得た実感です。
残業は、月10時間以下になった
そして本題です。デベロッパーでも、現在の設備系コンサルタントでも、残業は月10時間以下で収まっています。
月平均71時間から、10時間以下へ。それで年収が10%上がっている。
冒頭に書いた給与明細の話は、これのことです。残業がほぼゼロなのに、新卒のころと変わらない額が振り込まれていた。あの画面を見た瞬間に、6年間の働き方が何だったのかを理解しました。
正直に書いておきたいこと
良い面だけでは終われないので、失ったものも書きます。
現場代理人手当がなくなりました。 手取りの5〜10%程度です。
この手当は、現場の責任を持っている対価として付いていたものでした。転職すれば役割が変わるので、手当も当然なくなります。当たり前の話ですが、責任と一緒に収入も消えるという事実は、実際に明細を見ると想像より効きます。
現場代理人や主任技術者の手当が付いている方は、そこも含めて計算しておいたほうがいいと思います。基本給だけを比べると、転職後の見え方が変わってきます。
私の場合は、その代わりに基本給と賞与が上がりました。結果的にはプラスです。ただ、「手当」という形で毎月見えていた収入が消えるのは、最初は少し寂しさもありました。
福利厚生は良くなりました。毎月1万円を、住宅手当や子どもの習い事、資格のテキスト代など、指定されたジャンルであれば自由に使える制度があります。これは金額以上に、使い道を自分で選べるという点が大きいと感じています。
在宅勤務ができるようになったことで、通勤時間も減りました。その時間を仕事に充てることも、自分のために使うこともできます。 給与明細には出てこない部分ですが、生活への影響は小さくありません。
年収を考えるときの3ステップ
ステップ1|自分の年収に占める残業代の割合を出す
給与明細を1年分開いて、「残業手当」「時間外手当」の項目だけを足してください。それを年収で割れば、割合が出ます。5分で終わります。
施工管理には「残業のない月」がほぼ存在しないので、月同士を比べる方法は使えません。明細の数字を足すのが確実です。
出てきた割合が、あなたが残業から離れられない理由の大きさです。 私の場合は3割でした。3割落ちる前提で生活を組み直せるかどうか——そこが分かれ目になります。
ステップ2|勤務表と実際の労働時間の差を記録する
残業代が正しく支払われているかを確認してください。私は1年間記録して、386時間の差を見つけました。
もし差があるなら、その分はあなたが働いて、受け取れていない時間です。
ステップ3|自分の経験が外でどう評価されるかを聞く
年収が上がるかどうかは、結局のところ市場が決めます。自分ひとりで考えても答えは出ません。
登録したからといって、転職しなければいけないわけではありません。私も、求人を見ながら1年かけて準備しました。まず「自分の経験がいくらで評価されるのか」を知るだけでも、判断材料が1つ増えます。
まとめ
サブコンの年収は、残業代でできていました。年収の3割が残業代で、残業をやめれば手取りが3割落ちる。だから残業を減らせない。 これは根性の問題ではなく、給与の構造から来ています。
転職して年収は10%しか上がっていません。それでも、残業が月70時間台から10時間以下になりました。同じ額をもらうために働く時間が、まったく違います。
もし「年収が大きく上がらないなら転職する意味がない」と考えているなら、一度、残業時間まで含めて比べてみてください。 見える景色が変わるかもしれません。
- 転職の全体像を知りたい方は → 施工管理の転職まとめ|サブコン6年→発注者側へ移った私の全記録
- 実際の転職活動の記録は → 施工管理からデベロッパーへ転職した話|準備1年・活動2ヶ月の全記録


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