増減見積の作り方|現場で赤字を出さないための予算管理

電卓と書類を手にする人物のピクトグラム|増減見積の作り方 施工管理のリアル
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「この変更、いくらくらい増える?」

定例会議でそう聞かれて、答えられずに持ち帰った経験はありませんか。私は3年目で一人現場の現場代理人を任されたとき、まさにこれで失敗しました。

増減見積は、現場の利益に直結する業務です。それなのに、体系的に教わる機会はほとんどありません。私も最初は重要度に気づいていませんでした。

増減見積とは、工事内容の変更を整理して、契約時の金額を基準に増額分と減額分を積み上げ、最終的な金額を出すものです。

私は電気サブコンの施工管理を6年経験し、現在は発注者側で見積書を査定する仕事をしています。作る側と見る側、両方を経験した立場から、増減見積の作り方と、押さえるべき順番を書きます。


結論|「早く金額を伝える」が最優先

先に結論を書きます。

増減見積で最も大事なのは、とにかく早く金額を伝えることです。完璧な見積書を作ることではありません。

設計者も施主も、知りたいのは一点です。いくら増えて、いくら減るのか。 ここが分からないと、変更の可否を判断できません。だから話が前に進みません。

「こうしたい」という提案だけを持っていっても、返ってくるのは「で、いくら?」です。金額の提示が、議論のスタートラインになります。

  • 概算でいいので、金額を先に伝える
  • 作成の起点は、常に契約見積書の確認から
  • 自分から提案した項目は、施工前に出さないと認められない

どういう場面で発生するか

工事を進めていくと、契約したときの内容と、実際に必要な内容にズレが出てきます。オーバースペックだったもの、足りなかったもの。そのズレが増減見積になります。

減額になるケース

例えば、幹線ケーブルのサイズが過剰だった場合です。

改めて電圧降下を計算すると、ワンサイズ下げても問題ないと分かることがあります。サイズを下げれば材料費も施工費も下がるので、減額になります。

ただし、下げるだけでは通りません。幹線ケーブル計算書を提出して、根拠を示す必要があります。

増額になるケース

例えば、照明器具の数量が足りない場合です。

設計図の数量をもとに総合図を作成し、空調機・制気口・スピーカー・感知器といった他の設備も一緒にプロットしてみると、照明器具が不足していることが分かる場合があります。必要な明るさを確保するために器具を追加すれば、増額です。

これも同じで、総合図を作って見せることが必須です。口頭で「足りません」と言っても、まず通りません。

その総合図をどう作り、どう打ち合わせで詰めていくのかは、こちらにまとめました。

総合図の作り方|一人では完成しない図面の進め方


「増」と「減」、どちらが多いか

現場によりますが、私の実感では減額のほうが多かったと思います。

理由は、VE・CD案(Value Engineering / Cost Downの略で、品質を保ったままコストを下げる提案のこと)が常に議題に上がるからです。打ち合わせの最中でも案は出てきますし、出たらすぐ「いくらくらい下がる?」と聞かれます。

一方で増額は、数量が足りていないと明確に示せないと、言い出しにくいというのが本音でした。

ここでひとつ、正直に書いておきたいことがあります。

見積を作る工数そのものは、請求できません。 減額の見積を何日もかけて作っても、その作業分は請求できない。人件費に含まれているという整理なのだと思いますが、負担は確実にあります。

細かい話ですが、こうした積み重ねも、私が施工管理を離れた理由のひとつでした。

サブコンという立場に固有のキツさについては、こちらにまとめました。

サブコンを辞めたい|キツさの正体は「立場」だった。6年働いた私の結論


作成の手順

ステップ1|契約見積書を確認する

すべての起点はここです。

自分が「これは増額だ」と思っていても、契約見積書には既にその内容が計上されている場合があります。まず現状を正確に把握しないと、話が噛み合いません。

私の会社では、契約見積書は積算部が作成していました。自分が作った見積書ではないので、中身を読み込むところから始める必要があります。

ステップ2|単価は契約見積書から拾う

増減見積の単価は、必ず契約見積書の単価を使います。 新しく単価を作ると、根拠を問われて話がややこしくなります。

ただし、いまは事情が変わってきています。銅価格の高騰やメーカーの価格改定が頻繁に起きているためです。

物価上昇分については、条件書に「上昇した分を増減見積で計上できる」旨が謳われている場合があります。契約書と条件書は必ず確認してください。 私の頃はあまり意識しませんでしたが、いまは重要な確認事項だと思います。

ステップ3|数量を拾う

ここで最も大事なのは、溜めないことです。

かかる時間は項目の内容と量次第ですが、1項目ずつその都度処理すれば1時間で終わることもあります。逆に、最後にまとめると1〜2週間かかります。 作業量が増えるわけではないのに、思い出す手間と確認の往復が積み上がるからです。

なお、自分で施工図を描いていれば拾いは早く終わります。規模の大きい現場でCADオペレーターに図面を描いてもらっている場合は、自分で描いているときより時間がかかると思います。

ステップ4|提出する

下請けの立場なら、元請けの設備担当または所長へ。元請けの立場なら、設計者・工事監理者・施主へ提出します。


提出のタイミングを外すと通らない

ここが実務上、最も重要なポイントかもしれません。

原則は、現場で作業をする前です。

作業を終えてから出すと、後出しジャンケンになります。「認めていないから払えない」と言われる場合があります。多くは毎週の定例会議で話題に上がるので、その場で出せるようにしておくのが理想です。

ただし、実際には差があります。

誰が言い出した変更か施工後に出した場合
設計者から出た案通る場合が多い
自分から出した案認められないパターンが多い

設計者からの指示であれば、施工が先行していても後から認められることが多いです。危ないのは、自分から提案した項目です。ここでタイミングを外すと、そのまま請求できず、自社の負担になります。


通らなかった事例

提案が却下された経験もあります。

ケーブルの本数が少なかったので、ケーブルラックではなく、ケーブルハンガーなどの支持材に変更したいと提案しました。コストは下がります。

しかし却下されました。理由は、後から改修工事でケーブルを引き直すとき、ケーブルハンガーだと引き換えが大変になるというものでした。

これは考え方によりますが、将来の改修や追加配線まで含めて考えれば、その通りだと思いました。建物は完成してからのほうが長く使われます。 いま発注者側の立場になって、この指摘の意味がよく分かります。

なお、増減見積が発生するのは設計変更だけではありません。消防検査に向けた事前協議で指摘を受けると、感知器の追加や誘導灯のグレード変更が発生し、そのまま増額要素になります。

消防検査で指摘されたこと|事前確認で防げるものと防げないもの


私が一人現場で失敗したこと

3年目で一人現場を任されたとき、私は増減見積の重要度に気づいていませんでした。

その結果、最後にまとめて処理することになりました。 増減項目は30〜50項目ほどあり、まとめ上げるのが本当に大変でした。

さらに問題だったのは、精度です。「とりあえずこれくらい」と口頭で伝えていた金額が、実際に見積書を作ってみると違っていました。増額はもっと大きく、減額は思ったほど下がらない——伝えた金額を、後から悪い方向に訂正することになります。

早く伝えることは正しいのですが、根拠のない数字を伝えると、後で自分が苦しくなります。 このバランスは、経験を積んで身につけるしかない部分だと思います。

一人現場をどう回していたかは、こちらに書きました。

一人現場の乗り切り方|3年目で現場代理人になった私が身につけた5つの習慣


納得がいかなかった案件

もうひとつ、印象に残っている案件があります。

ゼネコンの下請けとして入っていた現場です。実際に増額となる項目が発生していました。ところが、産業廃棄物の処理費を下請け同士で折半するという話と相殺され、プラスマイナスゼロという扱いになりました。

下請け同士で費用を折半すること自体は、あり得る話です。ただこのときは、増額要素のほうが明らかに多かった。 追加をもらえなかったことに、納得はいきませんでした。

これも私の実感でしかありませんが、下請けの立場で起きうることのひとつだと思います。


これから増減見積を任される方へ

① 契約見積書を読み込む

当たり前のようですが、ここが出発点です。積算部が作成した見積書であることが多く、自分で作ったものではありません。 何がどう計上されているかを把握しないと、増減の判断ができません。

② 概算でいいから、その場で伝える

自分では「通らないだろう」と思う内容でも、まず金額を伝えてください。判断するのは施主と設計者です。金額がないと、検討のテーブルにすら乗りません。

③ 金額感を身につける

打ち合わせの最中に「この照明器具に変更したら、いくらくらい?」と聞かれる場面が増えていきます。

ざっくりでいいので、その場で答えられる感覚を持っておくと強いです。最初は誰も持っていません。私も持っていませんでした。案件を重ねるうちに、徐々に身についていくものです。


まとめ

増減見積で大事なのは、契約見積書を起点にすることと、早く金額を伝えることの2つです。

そして提出のタイミング。特に自分から提案した項目は、施工前に出さないと通りません。ここを外すと、請求できないまま自社の負担になります。

私はいま、発注者側で見積書を査定する立場にいます。現場で増減見積を作っていた経験が、そのまま判断材料になっています。 あのとき苦労した作業は、無駄ではありませんでした。

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