ケーブルラックの継ぎ手が、足りない。
布設作業の途中でそれに気づいたとき、私は代理店に電話をかけていました。通常の輸送ルートでは即日は無理。結局、赤帽の緊急配送で持ってきてもらい、作業は止まらずに済みました。ただし送料は割高です。発注の数量を間違えた代償でした。
私は電気サブコンの施工管理を6年経験し、3年目で一人現場の現場代理人を任されました。この記事では、材料の発注と納期管理をどう回していたのか、失敗も含めて実体験で書きます。
結論|すべては受電から逆算する
先に結論を書きます。
電気工事の材料発注は、受電日からの逆算で組み立てます。
極論を言えば、電気工事の材料のほとんどは、受電して電気を供給するために必要なものです。キュービクルも、盤も、幹線ケーブルも、受電日に間に合わなければ意味がありません。
だから発注の管理は、受電日を起点に、納期をさかのぼって「いつまでに発注するか」を決めることに尽きます。納期を読み違えれば受電が遅れ、受電が遅れれば工期全体が圧迫されて、突貫工事になります。
- 発注のデッドラインは、受電日から逆算して決める
- 納期の長い大型品は、すべてリスト化して見える化する
- 発注は必ず文章で残す。電話だけの発注はしない
何を、どこへ発注するのか
私が発注していたものを挙げます。
受変電設備(キュービクル)、発電機、変圧器、コンデンサ、リアクトル、盤類、ケーブル、照明器具、照明制御機器、ハンドホール、配線器具、配管類など。
発注先は材料代理店です。私の現場では、こう使い分けていました。
| 区分 | 品目 | 発注先 |
|---|---|---|
| A材料(大型・オーダー品) | キュービクル、盤類、変圧器、照明器具など | それぞれ専門の代理店へ |
| B材料(汎用品) | ケーブル、配管、配線器具など | まとめて1つの代理店へ |
B材料でも、ケーブルだけは専門の代理店へ分けて発注することもありました。
納期の目安と、その変動
私の経験では、納期の目安はこうでした。
| 品目 | 納期の目安 |
|---|---|
| 受変電設備(キュービクル類) | 3〜5ヶ月 |
| 盤類 | 3〜5ヶ月 |
| 照明器具 | 半月〜2ヶ月 |
| 配管類 | 1〜2日 |
ただし、納期は時期によって大きく変動します。 私が見てきた範囲でも、こういうことがありました。
- 東京五輪前の新築ラッシュで、キュービクルや盤類の納期が6ヶ月〜1年に伸びた時期があった
- 継電器類の納期が長期化し、それを部品として含むキュービクル全体の納期に影響した時期があった
- 小中学校や高校のエアコン設置工事が集中し、室外機まわりの配管に使う厚鋼電線管(G管)が品薄になった時期があった
そして、いまは、照明器具です。一般照明用の蛍光灯は、2027年末までに製造・輸出入が終了します。 水俣条約締約国会議の決定を受けたもので、2026年1月から種類に応じて順次規制が始まっています。
出典:経済産業省「蛍光灯からLED照明への切り替えはお済みですか?」
この影響でLED化工事が増え、照明器具の納期がかかる状況が続いています。
納期にはその時々のトレンドがあります。 代理店やメーカーから情報を取り続けることが必須です。
デッドラインは「納期」より前にある
逆算するとき、一番間違えやすいのが盤類です。
「納期5ヶ月」と言われたら、5ヶ月前に発注すれば間に合う——そう考えると、受電に間に合いません。その5ヶ月は、発注にGOをかけてからの5ヶ月だからです。
盤はオーダー品です。名称も回路数もブレーカー容量も現場ごとに違うので、発注の前に製作図の工程が挟まります。トータルではこうなります。

合計で約8ヶ月。つまり、後述する発注リストに書くべきは「発注日」だけではありません。その前の製作図とチェックの期日まで書いて、初めて逆算になります。
恥ずかしい話ですが、私は最初、製作図に1〜2ヶ月かかることを知りませんでした。よく考えれば当たり前なのですが、当時はその工程が頭になく、危うく読み違えるところでした。
受電までの段取り全体は、こちらにまとめています。
照明器具は「台数を拾う」工程がある
照明器具にも、発注前の工程があります。
台数が多いので、総合図がある程度固まって最終的な台数が見えてきたら、図面から台数を拾います。 一覧表や設計図の姿図に台数を書いて代理店へ渡すと、代理店が一覧表を作って返してくれるので、その台数で間違いないか確認してから発注です。
この事前準備に1ヶ月ほどかかる場合があります。 どの発注にも「台数を拾う」という作業が挟まることを、忘れないでください。
一人現場でなければ、部下や社内の積算担当に図面を渡して拾ってもらうことも可能です。
発注実務で、私がやらかしたこと
ここまでは受電から逆算する「納期管理」の話でした。ここからは少し種類が変わります。日々の発注そのもので起きるミスです。逆算とは別物ですが、どれも現場を止めかねません。
継ぎ手を切らして、赤帽を呼んだ
冒頭に書いた話です。
ケーブルラックの継ぎ手の数量を間違えて発注し、布設作業の途中で足りなくなりかけました。代理店に電話しても、通常の輸送ルートでは即日に間に合いません。
結局、赤帽の緊急配送で持ってきてもらいました。私のケースでは、送料が1回5,000〜7,000円ほど。赤帽の運賃は距離制(20kmまでの基本額に距離に応じて加算)なので、条件によって変わりますが、通常の配送に比べれば確実に割高です。
作業を止めないための緊急手段としては正しかったと思います。ただ、送料はそのまま原価に効きます。そもそも数量を間違えなければ払わなくてよかったお金です。
圧着端子のサイズを、何度も間違えた
ケーブルを盤内のブレーカーや端子台に接続するとき、圧着端子(ケーブルの先端に圧着して、ネジで接続するための金具)を使います。
このサイズ選定が、意外と厄介です。ケーブルの太さに合わせるサイズと、接続先のネジ径(M8かM10かなど)の両方で決まります。ケーブル側はまず間違えないのですが、ネジ径のほうをよく間違えて発注していました。 さらに、端子台の形状によっては通常サイズが入らず、長い形状の端子が必要な場合もあります。種類が多いのです。
悩んでいたところ、先輩からこう教わりました。
「盤の製作図チェックバックのときに、『圧着端子と色付きキャップも付けてください』と一言書けばいい」
そうすれば、メーカーが盤に合った圧着端子とキャップを付けて納品してくれます。次の現場からは、圧着端子で悩むことがなくなりました。
ちなみに色付きキャップとは、ケーブルと圧着端子の接続部に被せる樹脂製の保護カバーです。相ごとに色が決まっていて、判別に使います。
盤のトラックを、3台同時に呼んでしまった
納期どおりに物が来なかった経験は、実はありません。当日の段取りでミスをしたことはあります。
盤類の納品日、盤を載せたトラックは3台ありました。これを同じ時刻に呼んでしまったのです。
3台一気に来ても、現場には入れません。搬入も1台ずつです。結果、2台目と3台目のドライバーには2〜3時間待機してもらうことになりました。
第1便、第2便、第3便と時間をずらして呼ぶべきでした。納品は「届く日」だけでなく「届く時間の設計」まで含めて段取りです。
発注管理の軸は「大型品のリスト」
ここまでの話は、突き詰めると1つの作業に集約されます。納期の長い大型品を、リストで管理することです。私はこれを発注管理の軸にしていました。
キュービクル、盤類、発電機。こうした大型品を、すべて洗い出してリスト化します。書くのは品目だけではありません。
- いつまでに製作図を完成させるか
- いつまでに承認を得るか
- いつまでに発注するか(デッドライン)
先ほどの盤の例で言えば、受電日から8ヶ月をさかのぼって、この3つの期日を埋めていく。ここまで書いて、初めて「逆算」が形になります。
一方、配管類やボックス類、細物の電線、支持金具といった日常的に発注するB材料は、リスト化しませんでした。量が膨大で把握しきれないからです。リスト化するのは大型品だけ。 すべてを管理しようとすると、かえって回らなくなります。
これが軸です。以下は、それを支える2つの習慣です。
発注は必ず文章で残す
発注内容は、メール・書面・FAXなど、あとから確認できる形で必ず残します。電話だけの発注は絶対にしません(赤帽のような緊急時は除きます)。
発注する側もされる側も人間なので、ミスをします。口頭では聞き間違いが起こります。文章にしておけば、間違いがあってもどちらのミスかが分かり、次に活かせます。
「実際のところ」を聞いてみる
これは私の感覚ですが、代理店やメーカーの納期回答は、余裕を持った数字で返ってくることが多いと思います。保険をかけるのは当然のことです。
そこで、発注内容がある程度固まってきた段階で、こう聞いてみます。
「納期3ヶ月と言っていましたが、実際のところはどうですか?」
すると「実際は2.5ヶ月です」と縮まるパターンがあります。早まる分には問題ないので、この確認はやる価値があります。
小さなコツ|ケーブルには幹線番号を書いて発注する
最後に、地味ですが効くコツを1つ。
幹線ケーブルには、設計図で幹線番号(L-1など)が振られています。発注時に、この番号も一緒に書いてください。
ケーブル:CVT60sq×100m
ケーブル:CVT60sq×200m
これでも発注はできます。でも現場に届いたとき、同じCVT60sqのドラムが2つ並んでいたら、どちらがどの幹線か分かりません。 作業する職人さんは、何mずつ頼んだかを知らないのです。
ケーブル:CVT60sq×100m L-1
ケーブル:CVT60sq×200m L-2
こう書けば、代理店がケーブルドラムに幹線番号を書いて納品してくれます。現場での判別が、一目でつきます。
まとめ
材料の発注と納期管理は、受電からの逆算がすべての起点です。
軸になるのは、大型品のリストです。製作図とチェックの期日まで書き込み、発注のデッドラインを見える化する。あとは発注を文章で残し、納期のトレンドを代理店から取り続ける。この積み重ねが、突貫工事を防ぎます。
私自身、継ぎ手を切らして赤帽を呼び、圧着端子を何度も間違え、トラックを3台同時に呼びました。失敗はどれも、段取りの一手間で防げたものです。この記事が、同じ回り道を減らす材料になれば嬉しいです。
- 一人現場での動き方については → 一人現場の乗り切り方|3年目で現場代理人になった私が身につけた5つの習慣


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