「この点検口、ここには付けたくないんですよ」
意匠の担当者にそう言われて、話が止まりました。天井内の配管・配線を確認するには点検口が要る。でも、意匠としては天井面に点検口を見せたくない。
どちらの言い分も正しい。 これが総合図の打ち合わせで起こることです。
私は電気サブコンの施工管理を6年経験し、3年目で一人現場の現場代理人を任されました。この記事では、総合図をどう作り、他工種とどう調整したのかを実体験で書きます。
総合図は、一人では完成しない図面です。 現場の共同成果物と言ってもいいと思います。
結論|プロットは大雑把に始めて、調整は打ち合わせでやる
先に結論を書きます。
総合図の作成でつまずくのは、最初から正確に描こうとしたときです。
設計図には既に設備の位置と個数がプロットされています。まずはそれを、大雑把でいいので写していく。壁からの離れ寸法や均等割りは、後から調整すれば済みます。
そして、干渉や納まりの問題は自分一人で解決できません。 打ち合わせの場で、建築・空調・衛生の担当者と図面を囲んで詰めることになります。
- まずは仮でいいのでプロットする。細かい調整は後
- 干渉の解決は打ち合わせの場で。一人で抱えない
- 電気設計者を味方につけると、調整が通りやすくなる
総合図とは何か
建築・電気・空調・衛生・土木といった複数の工種の情報を、1枚の図面に重ね合わせたものです。目的は納まりと干渉の確認。天井の中で配管とダクトがぶつかっていないか、梁下に器具が収まるか——実際に施工する前に、紙の上で確認します。
作成するのは特定の誰かではありません。建築、電気、空調、衛生の担当者が全員関わります。そして、現場が着工したら最初に取りかかる図面でもあります。
総合図に載せるもの
私が担当していた電気の範囲で、実際にプロット(図面上に設備の位置を配置していく作業)していたものを挙げます。
天伏図(天井を見上げた図)
照明器具、人感センサー、誘導灯、感知器、スピーカー、スプリンクラー、カメラ、空調機、制気口。
電気だけでなく、空調と衛生の設備も同じ面に載ります。 だから干渉が起こります。
壁・床
コンセント、照明スイッチ、壁付照明器具、インターホン、電話アウトレット、LANアウトレット、テレビ端子、受信機、分電盤などの盤類、壁付カメラ、空調リモコン。
この範囲は電気がメインになります。
外構
照明器具、ハンドホール、盤類、キュービクル。
ここに挙げたのは、私が担当した現場での話です。建物の用途や規模、元請けの様式によって載せる項目は変わります。 自分の現場では何が必要か、最初に確認してください。
作成の手順
① 建築から平面詳細図と天伏図をもらう
まずここからです。ただし注意点があります。
この段階では、建築の図面もまだ完成していません。 総合図と建築図は同時進行で進むからです。とりあえず最新版をもらって、そこに載せていくことになります。
② 設計図の内容をプロットする
設計図には、ある程度の位置と個数が既にプロットされています。それを写していきます。
ここで細かいことを考えないのがコツです。 壁から200mm離してコンセント、そこからまた200mm離して隣に——といった調整を最初からやろうとすると、手が止まります。
まずは仮でいいので図面上に置く。寸法線の記載と細かい調整は、その後です。
③ 凡例表を作る
忘れやすいのがこれです。
凡例表とは、図面上のシンボルが何を示しているかをまとめた表です。総合図には必須ですし、打ち合わせの場で「このシンボル、何だっけ?」となる場面が実際にあります。
経験が浅いとシンボルの名称を覚えきれていないこともあるので、自分のためにも作っておくべきです。
打ち合わせの進め方
順番にプロットして、最後の人が印刷する
電気、空調、衛生の担当者が、順番に自分の設備をプロットしていきます。順番は現場によって決まります。
3社分のプロットが終わったら、最後にプロットした担当者がA1サイズで印刷し、打ち合わせの場に持っていきます。正直、この順番が最後になると面倒でした。
図面を囲んで、その場で書き込む
打ち合わせには、建築・電気・空調・衛生の担当者が集まります。設計者が入る場合もあります。
図面を囲んで、こういう話が飛び交います。
- ここが干渉している
- 梁下で納まっていない
- スイッチが多く並ぶので、建築側で壁補強が必要
指摘はその場で図面に書き込みます。 終わったら、書き込んだ図面をスキャンしてデータ化し、各担当者へ展開します。これもA1サイズなので、スキャンが一苦労です。
承認までのルート
下請けの立場なら、ゼネコンの設備担当 → 設計者 → 施主という順で承認を得ます。元請けの立場なら、設計者と施主に直接です。
修正は10回以上入る
これが総合図の実態です。最低でも10回以上は修正が入るイメージでした。
理由は、建築の平面詳細図も同時に進んでいるからです。壁が不要になった、部屋そのものがなくなった——こうした変更が随時発生します。
総合図だけが独立して完成することはありません。
総合図で見つかる問題は、3種類に分かれる
実際にプロットして初めて分かることがあります。これが総合図を作る意味です。
私が経験した問題を整理すると、大きく3つに分類できました。
| 種類 | 何が起きるか | 対処 |
|---|---|---|
| 数量が足りない | 設計図の数量では機能を満たせない | 追加 → 増減見積 |
| 物理的に納まらない | 他の設備や構造体と干渉する | 器具変更・配置変更 |
| 法令上の確認が必要 | 基準に抵触する可能性がある | 管轄消防などへ確認 |
それぞれ、実例を挙げます。
数量が足りない
照明器具がその代表です。設計図の数量をもとに廊下へ均等割りでプロットしてみると、明らかに数が足りませんでした。必要な明るさが確保できません。
非常用照明でも同じことが起きました。設計図の数量では警戒範囲を網羅できておらず、何台か追加になっています。
数量不足はそのまま増額要素になります。器具を追加すれば、増減見積の項目が増えるということです。
物理的に納まらない
梁下のダウンライトが典型です。均等割りで割り付けると、ちょうど梁の下に器具が来てしまう。ダウンライトは天井内に埋め込む器具なので、梁があると収まりません。
対処としては、懐(ふところ:器具が天井内に入る奥行き)が浅いタイプに変更する方法があります。ただし器具が変わるので、これも増額要素です。
他にもあります。分電盤の前に机が配置されていて扉が開かない——この場合は机の配置を変更してもらいました。電気シャフト内に盤類をプロットしたら作業スペースが足りない——シャフトをもう少し広くできないかという相談になります。
いずれも、紙の上で気づかなければ現場でやり直すことになる類の問題です。
こうした変更は、そのまま増減見積の項目になります。
法令上の確認が必要
感知器と空調機の吹き出し口の関係がこれにあたります。感知器の設置位置には、吹き出し口からの離隔距離という考え方があります。プロットしてみると、どうしても近くなってしまう箇所が出ました。
この場合、自分たちの判断では決められません。管轄消防への確認が必要になります。
消防検査で指摘されたこと|事前確認で防げるものと防げないもの
他工種とぶつかったとき
ここからが本題かもしれません。総合図の打ち合わせでは、どちらの言い分も正しい場面が必ず出ます。
事例① 点検口の位置|痛み分けで決着
冒頭に書いた点検口の話です。
天井内の配線やボックスを確認するには、一定の間隔で点検口が必要です。設備の仕様上、これは譲れません。
ところが意匠の担当者は「ここには点検口を設置したくない」と言います。しかも複数箇所ありました。
必要だと説明しても、設置したくないと返される。 結論が出ませんでした。
最終的にどうしたか。天井内の空配管が集まるプルボックスの位置を、点検口を設置してもよい場所へ変更しました。 点検口の位置を動かすのではなく、点検すべき対象のほうを動かした形です。
ただし、すべてを移動できるわけではありません。どうしても動かせない箇所は、そのまま点検口を設置しました。
痛み分けという決着です。全部は通らないが、全部を諦めもしない。総合図の調整は、こういう着地になることが多いと思います。
事例② GL工法の壁|設計者の力を借りて変更
GL工法(石膏ボードを接着剤で躯体に直接貼る工法)の壁に、コンセントとスイッチが必要な箇所がありました。
GL工法では、壁の中にボックスが入りません。 構造上、収める空間がないからです。
そこで建築担当に「LGS(軽量鉄骨下地)に変えてほしい」とお願いしました。しかし、当初は聞き入れてもらえませんでした。
そこで電気設計者に協力してもらいました。 遮音性能の観点からもLGSのほうが有利だと伝えてもらい、最終的にLGS工法へ変更されています。
電気設計者を味方につける
事例②が示していることは、実務上とても重要だと思っています。
電気設計者は、設計図を最初から作成した人です。 つまり、その図面の意図を最もよく理解しています。
総合図で調整が必要になったとき、設計者と一緒に進められるかどうかで結果が変わります。自分ひとりで建築担当と押し問答をしても、なかなか動きません。
総合図をうまく進めるコツは、電気設計者を味方につけること。これが私の実感です。
一人現場で苦労したこと
CADが使えなかった
正直に書きます。最初はCADソフトを使いこなせていませんでした。 学生時代に習ったわけでもなく、入社直後にがっつり操作していたわけでもありません。だから総合図の作成に、人より時間がかかりました。
助かったのは、先輩がCADをものすごく使いこなしていたことです。聞きながら操作を覚えました。上達方法は、とにかく触るしかないというのが率直な感想です。
CADソフトの違いと拡張子
これは知らないと詰まる部分です。
私がサブコンにいた頃、電気・空調・衛生ではT-fasというCADソフトを使っていることが多い印象でした。ただ、AutoCADやJw_cadを使っている方もいます。
問題は、ソフトが違うとファイルが開けないことです。
| ソフト | 主な拡張子 |
|---|---|
| T-fas | .tfs |
| AutoCAD | .dwg |
| Jw_cad | .jww |
| 共通形式 | .dxf |
T-fas同士なら .tfs のままやり取りできますが、異なるソフトを使う相手とは .dwg や .dxf に変換する必要があります。
総合図は複数社で回す図面です。最初に「どのソフトを使っているか」を確認しておくと、後の手戻りが減ります。
細かいけれど、知らなかったこと
A1図面を打ち合わせに持っていくとき、私は最初、丸めて持っていきました。 先輩に「折って持っていったほうが楽だよ」と言われましたが、普段の生活で扱うサイズではないので折り方が分かりません。
結局、先輩に教えてもらいました。そのとき「竣工書類でA1サイズの提出を求められることもあるから、覚えておいたほうがいい」と言われ、実際に後でその機会がありました。覚えておいてよかったです。
折り方は写真で見るのが早いです。A1をA4に折りたたむ手順が、写真つきで解説されている記事があります。
パンチ穴のスペースを残して折る、表題欄が見える状態にする——このあたりが、竣工書類として提出するときに効いてきます。
参考:第7回 図面の折り方 ~A1サイズをA4サイズに~(株式会社ダイテックス)
これから総合図を作る方へ
① 大雑把でいいので、まずプロットする
細部から入ると手が止まります。設計図の内容を仮置きしていくところから始めてください。
寸法や均等割りの調整は、全体が見えてからで間に合います。
② 凡例表を忘れない
打ち合わせで必ず要ります。作成の最初に用意しておくと、後で慌てません。
③ 電気設計者と一緒に進める
調整が難航したとき、頼れる相手です。設計の意図を説明できる人が味方にいるかどうかで、話の通り方が変わります。
④ 使っているCADソフトを確認する
拡張子の互換性でつまずくと、それだけで時間を失います。最初に聞いておくだけで防げます。
まとめ
総合図は、一人では完成しない図面です。各工種が順番にプロットし、図面を囲んで干渉を潰していく。修正は10回以上入り、建築図の変更にも追随することになります。
この作業を通して初めて見えることがあります。数量が足りない、物理的に納まらない、法令上の確認が要る——紙の上で気づけば、現場でやり直さずに済みます。
私がつまずいたのは、最初から正確に描こうとしたときと、一人で調整しようとしたときでした。仮でいいから置いてみる。困ったら設計者と一緒に動く。 この2つで、だいぶ進めやすくなると思います。
- 一人現場での動き方については → 一人現場の乗り切り方|3年目で現場代理人になった私が身につけた5つの習慣

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